2009/05/29

デビュー戦だよおっ母さん

自分の看板を立ち上げて早3ヶ月。
チマタで言う独立開業とは違い、顧客も同業者も全く無い状態からスタートしていました。
これね、「アタマおかしいだろ!?」と言われても仕方のない暴挙ではありますが、
色々あった末の苦渋の決断なので察して下さい。

最初は友達に声をかけまくって(←大迷惑だよな)、
慣れない飛び込み営業にも挑戦し(←もちろん惨敗)、
どうしよどうしよと思考停止に陥ったり(←これはいつも)、
文字通り路頭に迷っていました。


そんな時にみつけたあるmixiのコミュ。
お店を開きたい人達が集まって相談したり、既に開業してる人達のアドバイスを聞いたり、
mixi上だけでなく管理人さんが設けてくれる場所でリアルに話せる貴重な集まりでした。

その中で知り合った一人から問い合わせを頂き、
実際に候補となる物件を一緒に見に行ったのが4月の半ば。
クライアントは大阪で2,3店を運営して、今回は初の東京進出らしい。

「で、この物件いくらでやってくれます?」
「う~ん(考えるフリ)、まぁこの条件なら○○○円でやりますよ。」
「ほなその内訳は?ナニがどーなってその金額が出るんですかね?」
「え?ええ、と・・・・」

関東、関西での商習慣の違いもあれど、やたらと激しいツッコミに辟易。
というより、あまりにも事情に詳しいので訝しく思ってたら、
実は大阪での本業は建築の設計屋でした。飲食店経営は副業だそうで。。。

ボクはボクで「ゲェェェ。。。本職かよ。。。面倒臭ぇな」
向こうは向こうで「なんだよ只の職人崩れじゃねぇか。」

・・・始めから素性が分かっていたら敬遠する間柄なんですけどね。

お互いにトンデモないのに当たっちまったと思いながらも、
お互いに他に頼れるアテが無いものですから、
コントのような腐れ縁には目をつぶって打ち合わせを繰り返してきました。
ここまでくると「飲食店オーナーと内装屋の打ち合わせ」というよりは
「図面屋vs職人の言い争い」にまで成り下がり、
決めるべき事を決められずに話だけがトントン拍子に進んでしまう最低のパターン展開。



とはいえどちらも「いい店つくる」ことを生業にしている人間ですし、
そういう理想を純粋に求めるには会社ではなく独りでやるしかない、
という覚悟を持ってるので、信用はともかく信頼はできる間柄。
お互いに反発しつつ甘えつつもスタートを切る事になりました。

場所は飲食店激戦区の神田。
この街とも腐れ縁だな。。。と思いながら、
自分がDJをやっていた神田の店で唯一生き残っている[BAR ZIGZIG]に挨拶。
http://www.zigzigfactory.jp/(未だ自分の写真が載ってるのにはウケた)
この街で長く商売をしているオーナーや店長から
神田界隈の飲食店事情を根ほり葉ほりと伺って、
ヨコの繋がりを深める為にクライアントを紹介。
古い街ほど地域の寄り合いが重要ですからね。


で、どんな店かといいますと、
ロックバーでもソウルバーでもなく、すごく小さい立ち飲み屋。
只の立ち飲みではなく、焼き肉が食える立ち飲み屋。

ボクはその狭い空間を如何に活かすか模索中。特に煙が心配だ。
いわゆる「デザイン性」は考えず、機能性を最優先した作りになると思います。
彼の方は持ち前の行動力をフルに活かし質のいい肉を仕入れるルートを開拓中。

来週から入って6月下旬にはOPENできると思います。

こうご期待。

2009/05/20

次世代の音楽酒場の在り方

前の日記でお話したロックバー計画。
ただいまクライアントと共にジックリ構想を練っている段階ですが、
その過程で「これからの音楽バーはどうあるべきか?」と考えるようになりました。


ロックにしろクラブ系にしろ(もちろん他のジャンルも)、
コアな音楽の世界への最初の入り口って
「バーやカフェが初めて」という方は珍しくないはずです。
ボクも地元のバーで生まれて初めてターンテーブルを観たくらいですし、
「クラブってどんなんなの?」と訊いてくる友人にはまずDJバーに連れて行きます。

酒の飲み方音楽の聴き方女の口説き方から人生の方向性に至るまで、
ボクは全てバーで学んできました。もちろん今の仕事だってね。
するとやはり「プランナーとして最も得意なジャンルは音楽酒場です!」と
誰に対しても胸を張って言えるようになるのが最優先の課題です。

ここでボクの定義する飲食業界の中の音楽酒場ってジャンルとは、

・オーナーが愛するDEEPな世界への登竜門であること。
・無償有償問わず顧客の音楽活動をサポートすること。
・活動を通じて顧客の成熟と文化貢献を促すこと。

この3つが条件であり存在理由でもあります。
クラブ系マイミクの皆さんには当たり前すぎてアホくさい話ですがね。
名曲喫茶、歌声喫茶から現代のライブバーやDJバーに至るまで、
時代と共に手を変え品を変え文化風俗を創り出してきましたが、
そろそろ大きな変革期が来るような気がします。いや既に来てるのか?

原因はもちろんインターネッツ。

レコードやCDの代わりにネット配信で音楽を買う時代が本格化しているようです。
ボクはアナログ専門なので気付くのが遅すぎるんですがね。

試しにiPhoneで1曲買ってみました。Soul Rootsが300えん。
チョチョンってPASS入れてチュ~ってダウンロードしてハイ!終わり。
デジタルDJのネタ数の豊富さはコレが原因なんでつね。。


まぁ便利っちゃ便利だけどチトもの足りないところも。
欲しい曲がハッキリしていない時(ボクはいつも)なんかは、
何を頼りに検索すればいいのかわからないのですよ。

以前通っていたレコード屋サンは、
ボクの顔と音楽の好みとDJプレイのスタイルをちゃんと把握していてくれて、
「週末○○で回すんですよ~。ピークタイムで。」と言うだけで、
お勧めレコードをアレコレとチョイスしてくれました。接客業の神様ですね。
おまけに古い時代の曲について色々と教えて貰ったり、
気の合いそうなDJを紹介してくれたりと、クラブ業界の先生でもありました。
自宅でネットじゃこうはいかないでしょう。
ウンチク調べたところで屁理屈でしかなく、
生の体験談のような熱のこもったエピソードには到底かないません。

でね、ふと思った。
音楽バーにiTunes置いて、
スタッフがお客の好み聴きながら代理購入してやったらどうかな?と。
つまり「ミュージックストアを兼ねたバー」。既にあるのかな?

たしかiTunesは太っ腹なのでコピー制限はないはず。
店側が手数料を取れるかとうかは微妙だけど、抜け道は幾らでもあるでしょうw
けどもし将来、堂々と手数料を取れるようになったら、
音楽バーがレコ屋の領域に食い込めるんですよ。
当のレコ屋さんはネット販売が主流になってるから対面販売できないし。


お客の一人がリクエストした曲を店で流して、
「お!これカッコいいね!」と別の客が話しかける。

ここまでが既存の音楽バー。

これからは、
「お!これカッコいいね!この曲買うわ!」
なんてやり取りがあっても面白いと思います。

酒呑みながらレコードやCD選ぶのは楽しいですよ。
DJでもない限り酔っぱらってレコ屋に行ったりはしないと思うけど。
オレ?よくやりましたよ。
酔ってないと曲の本当の魅力がわからないもん。ハウスに限って言えば。


とまぁ、仰々しいタイトルの割にはショボいアイデアですが、
とりあえず一つって事で。
ネットとパソコンをサウンドシステムの中心に据える事で、
もっと面白い事もたくさん思いつくと思う。

2009/05/14

カフェの優劣は魔法で決まる

どんな業態でも飲食店をやるからには儲からないと生き残れません。

よく「カフェは儲からない」と言われていますが、それはブームに安易に乗っかって、
カフェ文化の何たるかを無視した粗悪なコンセプトだからではないでしょうかね。
ボクだってその「カフェ文化」というヤツを熟知してるわけではありませんが、
居心地の良い所と悪い所と嗅ぎ分ける鼻くらいは持っています。

飲食店経営には「回転率と客単価」という数字がつきものです。
コーヒー一杯で数時間も居座られては商売になりません。
とはいえ回転率を追求し過ぎるとカフェの要である「居心地」を犠牲にしてしまい、
そこらのファーストフードと同じ味気ない店に成り下がります。

となるとやはり既にいるお客さんに「もう一品頼みたくなる気分」にさせるのが
一番良い方法ではないでしょうか。

このお客さんの「気分」を操る上で重要なのが、お店のコンセプトメイキング。
お客さんが店に入った瞬間に、そのコンセプトを感じ取れるようにしなくてはいけません。
キャバクラのように話術と色気で攻める訳にもいきませんから、
攻めずに伝えるテクニックを店の随所にちりばめる必要があります。


ボクはバーテン時代には、
「美味しい酒を飲ませる」事よりも「美味しく酒を飲ませる」事を重視していましてた。
いまでも自分の好みの店を探す時、そこを基準に判断します。

つまり味覚嗅覚よりもそれ以外の視覚聴覚触覚を緩急つけて刺激してあげれば、
「もう少し居たい」「もっと食べたい」「また来たい」「好きな人を呼びたい」
といった願望にまで発展するんです。

さてそのテクニックはと如何なるモノかと言いますと、
ここでデザイナー、クリエイターといった職の出番になります。

店側の気持ちを形あるものに変換してお客に雰囲気として伝える。
壁床天井から家具装飾、ロゴマークからメニューブックに至るまで、
あらゆる場所にクライアントやデザイナー自身のエッセンスをすり込んでいくんです。
デザイン業は形の無い虚業であるが故に、
飲食業や建築業といった実業からは軽視される事もありますが、
「居心地」「雰囲気」を重視するカフェ業態では、
この魔法によって流行るか流行らないか決まってくるんではないでしょうか。

前にお話した「工務店と大工だけで作ったカフェはダサい」とはこの事です。
魔法の存在が信じられない人達に、魔法使いの店は作れっこありません。
スタバみたいな味気ないチェーン店作るのが関の山でしょうね。


またデザイナーは魔法使いと申しましたが、
本来ならばクライアントであるオーナーさんこそ、
その魔法を覚えて貰わなくてはなりません。

魔法を魔法たらしめる所以は知恵と知識。
カフェならばカフェに関わる文化や歴史を徹底的に洗い直してみては如何でしょ?
食文化とインテリアはもちろん、音楽や絵画も掘り下げてみたり、
プロデューサー的視点で「世の中はカフェに何を求めているのか」とか
考えてみるのもいいと思います。

2009/05/12

カフェブームの功績と恩恵

「お店開きたい」という人達と会ったりメールしたりしていますが、
今開業希望者に最も人気の業態ってカフェなんですよね。
猫も杓子もカフェカフェカフェカフェ。
もうボクはその人の身なりを見て「あ、カフェ開きたいんだな」ってすぐ分かるくらい。

いわゆる「カフェブーム」は落ち着いたと思われますが、
そこから生まれた文化の洗礼を受けた人達が開業を目指して頑張っている模様。
数年後にはあらゆる場所にカフェが乱立する戦国時代(?)に突入するかもしれません。

個人的にはブームや流行に流されるのは嫌いですが、
それが確固たる歴史と文化に裏打ちされたものであるなら、
ブームが冷めてから数年後が本当に面白いんですよね。
ボクも90年代前半のDJブームから10年後にDJ始めたクチですし。


ボクが部屋イジりに興味を持ち始めてから現在に至るまでの約15年を振り返ると、
ことインテリアにおいてはこのカフェブームが革命的な出来事かも、、と気が付きました。

ひとつは「飲食店の椅子は全て同じ物でなくてはいけない」という常識をブチ壊した事。
一つのテーブルにアンティーク椅子とデザイナー椅子と小学校の椅子が混在し、
一見チグハグだけど何故か雰囲気はユルくまとまっているという、
コーディネートのマジックを楽しめるようになったのはカフェからでしょうね。

特に2000年にOPENした渋谷の「アプレミディ」にはハマりましたね。
http://homepage3.nifty.com/cafemania/01cafe/sbya01_apresmidi.html
「今日はこの椅子に座りたい」「次来たらあのソファに座ろう!」と、
椅子だけでリピーターを呼べるんですから大したものです。


もうひとつは「素人によるDIYの普及と地位向上」。
それまでのDIYといえば「欲しい形が売ってないから」とか「単に作るのが好きだから」とか
どちらかといえば一部の人達の自己満足で終わるものだったのに対し、
カフェブーム以降は「手作り→カッコいい」という価値観が広く認知された事は大きいです。
お陰でプロも素人もテクよりセンス重視アイデア一発勝負のインテリアを目指すようになり、
ボクのような半チク大工でも独立しやすい土壌になった事は間違いないです。


インテリアに関しては技術的には目新しい進歩はないけれど、
「誰でも問屋から建材を買える」「誰でも作例写真を公開できる」
「職人の技術やコツを調べられる」
といったネットによるインフラ整備の影響が大きく、
こと大工仕事に関しては「下手なプロよりアマチュアの方が上手い」なんて事も。
ボクも最近は建築専門書よりも日曜大工の本から学ぶ事が多いくらいです。


いずれはボクもカフェ系の内装を作る機会があるんでしょうが、
実はこのカフェ系インテリア、マトモ(マジメ)な大工サンには難しいんです。
「まっすぐ、きっちり、しっかり」という価値観を身体に叩き込まれている本物の職人には
カフェ系インテリアの「ユルさ」が生理的に許せないようです。
キャリアの長いベテランほどクライアントの不可解な要望に苦しみ、
その結果おかしな内装が出来上がってしまいます。

修行時代こういう光景を何度も見てきまして、
その中でも最もバランスの取れた工事は
「下地を職人が作り、仕上げ作業は施主本人(できれば女の子)が行う」
といったものでした。

オンナのコは理屈抜き、フィーリングでモノ作りますから面白いモノが出来るんです。
ボクは左官や塗装なんかは素人の若い女の子を雇いたいくらいです。

これからカフェ開業を目指す方は覚えておいて下さいね。
ぜんぶ施工業者に任せるとかえってダサくなりますよ。